木材が語る物語
ハヤマウッドワークスの小原と申します。葉山町の小さな家具工房で、木とともに歩み40年、日々丁寧に木工に取り組んでいます。
今回は無垢の木を素材に、長年の経験を活かした家具を制作していますが、今回はその「木材の価値」について呟きたいと思います。
私たちが使用している木材には特別な想いが込められています。
ただの素材ではなく、年月を経て木が育んできた「物語」の一部だと私は考えています。
私は木の年輪や、フシ、虫が開けた穴だって全てが愛おしく感じるんです。
実際、木には黒や紫、縞模様といった特徴的な色彩や、強度や香りなど、他の素材にはない独特の個性があります。
古くから銘木とされる木々が持つ魅力もさることながら、家具に仕立てるときにはその価値が何倍にも増すもの。
今回は、私たちがどのような思いで木材を選び、どのように家具へと形作っているかをご紹介します。
希少な銘木とその色と模様
銘木と呼ばれる木材には、独自の特徴があり、銘木と呼ばれるには以下のような条件があります。
世にも珍しい黒や紫、縞模様の色をしている。
巨樹。強度がたかい。加工しやすい。
匂いがいい。
歴史的に名前が通っている。
杢と言われる模様がある。
いまとなっては、かずがそろわず、希少価値がある物。
などなど。
例えばカエデやクルミの巨木は、かつては雑木と呼ばれ特別視されていませんでしたが、いまでは希少な素材として高く評価されています。流通量が少ないからです。
私たちの工房でも、これらの銘木を大切に使用しています。
ただし、ただの「希少さ」をアピールするためではありません。自然が生んだその美しさと質感が、家具としての存在感を与えてくれるからです。木が生きてきた証ともいえる色や模様を、一点一点生かしながら、家具という形に仕上げています。
日本の木材と国産材へのこだわり
日本の大きな良材は伐採され尽くし、今ではほとんど残っていません。そのため、国産材は高額で取引され、入手が難しいのが現状です。
しかし、私たちは40年間の積み重ねで得た木材の在庫があり、今では入手が難しい日本の木材を惜しまず使っています。
また、私が国産材にこだわるのは「顔が見える素材」であるからです。木の育成から家具となるまでの過程がわかり、信頼できる素材を使うことでお客様にも安心していただける家具を提供したいと考えています。
輸入木材は安定した供給があり価格も手ごろですが、その背後にある輸送コストや環境への影響を考えると、やはり国内で育てられた木材を選びたいと思うのです。
外国から、はるばる高い運賃を払って、石油を使って、その国の生態系を破壊して、人々の資源を掠め取る様な事には加担したくありません。
リサイクルと再利用の精神
一つ一つの木材が持つ価値を大切にしたいと考えているので、もし希少価値の高い木材の在庫がなくなったとしても、使われなくなった座卓や箪笥などをリメイクし、新たな家具として生まれ変わらせるつもりです。
今までも、紫檀の座卓や黒檀の床柱、ケヤキの床の間など、歴史のある木材を再利用してリメイクした実績があります。
こうした再利用の試みは、単に「資源を節約する」という意味だけではなく、木が持つ生命力を新しい形で生かすという思いでもあります。
長年使われてきた木材には、その時間が染み込んでいます。その時間をさらに未来へ繋げていくためにも、私たちはリメイクを大切にしています。
多様な広葉樹の魅力
特定の木種だけにこだわると、市場や流行の変動に振り回されがちです。ハヤマウッドワークスでは、ナラやカバ、タモなど様々な広葉樹を使用しており、それぞれが異なる個性をもっています。
木の種類が違えば色合いや質感も異なり、出来上がる家具にも独自の表情が生まれます。お客様には、ぜひこの多様な表情を楽しんでいただきたいと思っています。
最後に:木とともに、歳を重ねる家具
我々の家具は、単なる「物」ではなく、長年かけて育まれた自然の恵みを身近に感じられる存在でありたいと考えています。
銘木と呼ばれる素材の美しさ、国産材へのこだわり、リサイクルの精神、そして多様な広葉樹の魅力。これらを活かした家具は、皆様の日々の暮らしをより豊かにしてくれると信じるとともに、願っています。
木とともに生き、時を刻む家具。そんな家具を私は作り続けたいと思います。
皆様のお気に入りの相棒が見つかりますように。
最後まで読んでいただいてありがとうございました!