職人として最初に出会った木材の記憶
こんにちは、小原です。
木工を始めて40年以上が経ちますが、私にとって特別な存在の木材の一つが「山桜」です。
木工を学び始めた頃、山桜との初めての出会いが、私の木工人生に深い影響を与えました。
今回は、山桜という木材の魅力、そしてその思い出についてお話ししたいと思います。
正直山桜って、ソメイヨシノに比べるとお花見でいうと地味ですよね。木材にするといい木なんですね!
ソメイヨシノは江戸時代に観賞用として作られた木で、用材には全然向かないんだよ。桜の仲間でも山桜の材質が一番木工にはあっているんだよ。
へー、初めて知りました!
訓練校時代、山桜との出会い
初心者が選んだ、運命の木材
私が山桜に初めて触れたのは、木工訓練校に通っていた頃。長野県の奈良井宿にある材木店で、若社長が紹介してくれた一本の桜の丸太でした。
その桜は、赤茶色にピンクが混ざったような美しい色合いで、見た瞬間に「これだ」と直感しました。しかし、木工を始めたばかりの私に、材木を扱う知識も経験もありません。
若社長もそんな訓練生の素人同然の若者が、丸太一本ごと買うというのだから心配して、何度も「やめたほうがいい」と忠告してくれましたが、それでも私はその山桜を選びました。
勇気ありますね!丸太一本高額だったと思いますし学生だからお金もなかったんですよね。私なら躊躇して買えません。丸太は切るまで中がどんな状況なのかわからないから、賭けですよね。
私は昔から、ここぞというときは自分を信じて投資するんです。今までそれで結構成功してきたんです。この山桜も自分の直感を信じて良かったんだよ。
結果的に、この桜で「当て台」(木工作業に必要な作業台)を作り、現在も現役で使い続けています。木目はなめらかで、刃物の当たりも良く、適度な重さが作業を支えてくれます。
厚みが何度も削り直して当初60ミリあった厚みは45ミリ位に薄くなっても、40年経った今も頼りになる相棒です。
ずっと大切に家具や道具を使うのは、私のポリシーです。
山桜の木材としての魅力:特性と用途
木目と色合いが生み出す自然の美
山桜は、日本特有の広葉樹で、英語では “Japanese Cherry” または “Mountain Cherry” と呼ばれています。その美しい木目と、ピンクから赤茶色への独特な色合いは、日本国内だけでなく、海外でも人気があります。
特に、山桜で現れる「火焰杢(かえんもく)」と呼ばれる揺らめくような木目は、家具やインテリアの装飾材として高い評価を受けています。
先生、火焰杢って写真で見たことありますけど、本当に炎みたいですね!
そうなんだ。あの木目を見つけたときは感動したよ。思わず手を止めてじっと見入っちゃうくらい綺麗なんだよね。
耐久性と加工性
山桜は適度な硬さと粘りを持ち、乾燥させると安定するため、加工がしやすい木材です。また、適切に乾燥させると狂いが少なく、家具や工芸品に最適です。
切削加工が容易で表面が綺麗に仕上がる性質があり、それを生かして版画の台木に使われ、江戸時代の浮世絵などの印刷の版木はほとんど山桜でした。
木管楽器やピアノ、オルガンなどにも使われています。
家具では、テーブルやキャビネット、椅子など、木目や色合いを活かした作品に向いています。オイルフィニッシュを施すことで、山桜の持つ自然な魅力がさらに引き立ちます。
現在、山桜は市場では入手が困難で、桜を注文すると代用のカバ材が供給されることがほとんどです。
ニュースで見ますが。どんどん銘木が取れなくなっているんですね。
山桜が育む文化と魅力
日本の風景を彩る木
山桜は日本各地の山々に自生し、春には淡いピンク色の花が山肌を彩ります。その花はソメイヨシノと比べて小ぶりですが、野趣あふれる美しさがあります。
山桜の花は、古くから日本文化に深く根付いており、和歌や俳句にも数多く詠まれてきました。その自然な美しさは、木材として加工された後も、木目や色合いにしっかりと宿っています。
山桜って、日本の心そのものですね!その木を使って家具を作るなんて、なんだか特別な感じがします。
そうなんだ。あの木目を見つけたときは感動したよ。思わず手を止めてじっと見入っちゃうくらい綺麗なんだよね。
山桜を選ぶ理由と未来
原木市場での挑戦
山桜は、北海道や東北の市場でも探し求めた木材です。その特徴的な木目と安定した加工性が、家具職人としての私を魅了し続けています。特に、オイルフィニッシュで仕上げたときの透明感ある美しさは格別です。
未来の作品への期待
山桜は、家具だけでなく、内装や特別な作品にも適しています。これからも山桜を使った家具や小物を制作しながら、その魅力を伝えていきたいと思います。
まとめ:木目に宿る物語
山桜は、私にとって木工を学び始めた頃の情熱や、木材の奥深さを教えてくれた特別な木です。その美しい木目や色合いは、時を経ても色褪せることがなく、私の中で重要な存在であり続けています。
先生、山桜って本当に魅力的ですね。次の作品が楽しみです!
ありがとう。これからも山桜と向き合いながら、新しい作品を作っていくよ。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
小原でした。