「再生のきっかけと小さな変化」
ハヤマウッドワークス、略してハヤスタの小原と申します。葉山町の小さな家具工房で、木とともに歩み40年、日々丁寧に木工に取り組んでいます。
先生今日は何教えてくれるんですか?
今、引き出しのリペアやっていて、小さなツマミへの小さなこだわりの話をしようと思うんだ。
最近の家具は使い捨てだけど、私はなるべく再生させて使いたいと思っているんだ。
SDGにも良いですね!サステイナブルな社会にハヤモクは全力で取り組んでいきましょう!
横文字苦手です。。
ハヤスタでは、家具の修理やリサイクルを大切にしています。
今回手がけたのは、ある小引き出しのリペアです。
リペアの背景と、小さな部品へのこだわり、完了までのストーリーを共有したいと思います。
今回直す引き出しへの思い
この小引き出しは、引き出しのそれぞれの段の前板に、センの木、ミズナラ、クルミ、サクラと違う木を使うことで、単調になりがちな棚の表情を豊かにしています。
そのデザインも私は気に入っています。
今回はこのお気に入りの引き出しの全体をブラッシュアップします。
そのためには、すべての部品を取り外し削り直す必要があります。
少し傷んだツマミを修理しようと試みましたが、取り外して整えるよりも、いっそのこと新しいものを作った方が、時間も手間も省けそうだと判断し、作り直すことにしました。
木製のツマミ、ノブを自作する
木製のツマミ、ノブは、なかなか気にいる物がなく、自作するようになりました。
お客様によっては、年を取って指に力がはいりにくくて、クローゼットが開けにくいとか、引き出しの前板に、ツマミは邪魔だから指が入る穴を開けて欲しいなど、使う人は十人十色です。
ワンポイントのつもりで作るようになりました。
思いの外好評で、ずっと続けています。
細かい作業で私は、気が遠くなります!
私は楽しみながらやってますよ〜
「ツマミを作り直す過程」
1. 素材選び
もともとこの引き出しのツマミはブラックウォールナットで作られていました。木の持つ落ち着いた濃い茶色と美しい木目が魅力で、ツマミにはとても相性の良い素材です。
今回は、心機一転、アフリカンパドックという木材を選んでみました。
パドックは、硬く、重さもある木で、その鮮やかな赤みが特徴的です。
この木材は削り出した時は見事な赤色をしていますが、紫外線を浴びることでゆっくりと深い紫色へと変化していきます。
この変化も木の魅力の一つとして楽しめる、まさに「生きた素材」なのです。
日本の木材にはあまり見られないような個性を持つパドックは、実は家具職人の間でも珍重されています。
2. ツマミの形を整える
まず、パドックの板を14ミリ角に切り出し、V字型の丸棒削り台にセットします。
そして、小さな”平かんな”を使って、八角形から16角形、32角形へと、少しずつ丸みを帯びさせていきます。
最終的に滑らかな丸棒の形に仕上げたら、次に長さを45ミリに揃えます。
ここで使う「毛引き」という道具は、同じ寸法を正確にマーキングするためのもので、微妙な長さ調整が求められる家具制作には欠かせません。
3. 指にフィットするデザイン
次に、ツマミの根元部分をノミで削り、引き出しにしっかりと収まるよう調整します。また、指がかかりやすいようにわずかにテーパー(先細り)をつけ、ツマミの先端がやや広がるような形にしています。
指にフィットするこの形状は、シンプルでありながら使いやすく、触れたときの感触にもこだわりました。
最後に接着剤で固定し、ツマミを前板に15ミリ程度打ち込みます。
こうして、新しいツマミが完成しました。
細かい作業でお疲れ様でした!!
最後に:「小さなパーツがもたらすぬくもり」
見た目は小さな変化かもしれませんが、木目や色の異なるツマミが加わることで、引き出しの表情に新しい深みが生まれます。
また、材質による手触りや経年変化も、それぞれのツマミに個性を持たせてくれます。
前板も、センの木、ミズナラ、クルミ、サクラで、単調になりがちな表情を和らげてくれています。
「あれ、あの書類はどこだっけ?センの木の引き出しだね」
「ペンは桜の引き出しだよ!」
といった風に、家の中の整理にも少し楽しさが加わるかもしれません。
葉山ウッドワークス 略してハヤスタでは、こうした小さな部品にも心を込め、使う人に寄り添った修理とリサイクルを心がけています。
細やかな仕事を通して、家具が再び生活に溶け込み、長く愛される存在であることを願っています。
最後まで読んでいただきありがとうございました!