異国の記憶を刻んだ家具──ニューヨークへ旅立った、栗のキャビネットの話

オープニング

小原

こんにちは、小原です。
ハヤスタで家具や木工品を作っています。

今日は、私がこれまで手がけた中でも特に思い出深い仕事についてお話ししようと思います。日本から遠く離れたニューヨークに暮らすお客様のために作った、栗の無垢材で仕立てたキャビネットのお話です。いま改めて振り返ると、木工という仕事が、人と人の想いをつなぐ手段になっているのだと実感させられる経験でした。

道端の出会いから始まった家具作り

数年前、小さな道沿いの作業小屋に戻ってきたときのことです。声をかけてきたのは、Deanne Levyさんという女性でした。どこかで見たような雰囲気だと思ったら、以前、伝統的な日本の木工を習いたいというアメリカ人の方に何人か教えていたことがあって、彼女はその紹介で来られたとのことでした。

「日本での暮らしの記念に、家具を作ってもらえませんか?」

最初にそう言われたときは、正直、少し戸惑いました。というのも、アメリカと日本では湿度も気候もまったく違い、木の動き方も大きく異なります。修理に伺うこともできないことから、壊れたらどうしようという不安もありました。

ぺり

それでも、断らなかったんですね?

小原

はい。拙い英語で説明はしたんですが、彼女の意志はとても固くて。壊れても、知り合いの木工家が見てくれるから大丈夫だと。しかも、数ヶ月かかっても構わないとおっしゃってくださったんです

プランニングと製作の日々

使う目的が明確だったこともあり、図面のやりとりは数回だけで済みました。とはいえ、やはりスケール感が違うので、日本のサイズ感とは少しズレがあり、苦戦もありました

素材には、日本国産の栗の無垢板を使いました。仕上げには少し濃い茶色を加え、伝統的な”天秤刺し”という指物の技法で組み上げています。ワンピースでは運搬が難しいため、三つのパーツに分けた”スリーピース構造”にしました。一番下の箱の引き戸には、30年以上前に手に入れた、貴重な杢板を使用しています。

ぺり

30年以上前の板って、すごいですね…そんな素材、よく取ってありましたね

小原

大切にしていた板でした。ちょうど合う場面が来るまで、ずっと待っていたような気がします

無事完成、そしてその後

完成後、展示用に出していたベンチも気に入ってくださり、一緒にご購入いただきました。その後、Deanneさんは急な帰国となり、しばらく音信不通に。

気になっていた頃、彼女からいただいた名刺を頼りにスタジオを検索したところ、私がアクセスした記録を見てくれていたようで、数日後、お返事が届きました。そこには、キャビネットが今も大切に使われている写真が添えられていました

ぺり

SNSがつないでくれたんですね。インスタって、こういう形でも役立つんだなぁ

小原

はい。デジタルって苦手ですが、あの写真を見たときは本当にホッとしました


サマリー:職人仕事は、人と記憶をつなぐ

この仕事は、単なる家具製作ではありませんでした。日本の木工技術が、異国での生活を支えるかたちになった。そしてそれが、時を越えてつながっていく。

私自身、控えめな性格なのであまり語ることはありませんが、こうして一つひとつの仕事に向き合うことが、私なりの「伝える」ということなのだと思っています。

木工やDIYに興味がある方には、こうした一品一品の背景にも目を向けていただけたら嬉しいです。

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